シロダモ
クスノキ科シロダモ属
本州(宮城・山形県以南)、四国、九州、沖縄 暖地の山野の比較的湿潤なところ。常緑広葉樹のなかでもっとも耐寒性の強い種の一つ 常緑高木(高さ10~15mになる) 若葉は垂れ下がり両面とも黄褐色の絹毛におおわれる 雌雄別株<1>
低地の林に普通。三行脈が目立つ。葉裏が目立って白い。花期も果期も秋<4>
1)-7) F06(いつものベンチ前)←伐採されてしまう
8)-17)D11(尾根道中央) 高さ7m 雌株
18)-21) 34)-38) D11の近く 高さ4m 雌株
22)-33) D11-2 D11の反対側 高さ3m 雄株
今回はシロダモを紹介します。しかしこのシロダモ、悲しい出来事が起こったのです。4回に分けてお話しします。まず写真をご覧ください(ここの8))、2017/10/8、福島県の東吾妻・霧ノ平の光景です。恐らくここに来る人は少ない穴場です。標高1,400m。一切経山から滑川温泉への道の途中です。主目的は温泉で、せっかくだからとここに登ったのですが、当初、登山道は荒れていて藪が深いという情報があり躊躇していました。初めての山域で、メインの登山道から外れていて通る人は少ない。藪が深いということは道に迷う危険性が高いのです。そんな時、地元の人が登山道の藪払いをしたという情報が入りました。そこで決行したのです。(ただし当日は大雨で断念。初日は温泉に直行して、翌日ピストンで写真の場所まで来ました。確かに道は荒れていましたが、藪は綺麗に払われていました。藪が深かったら大変でした)。なぜこんなことを思い出したかというと、問題は<藪払い>なのです。
1)これは4か月前の5月6日のシロダモの若葉です。ご覧のように葉が垂れ下がり特徴的なので、すぐシロダモだとわかります。ここはよく紹介している<いつものベンチ>の目の前です。定点観察を始めて思い出したのが、この写真。シロダモも背が高くなるので、こういう若い樹は観察にうってつけ。定点観察の対象に選定しました。
2)-4)同じシロダモです。これが8月29日のものです。あとでゆっくり撮影しようと思って、とりあえず撮影しておいたものです。今、思うともっとしっかり撮っておけばよかったと後悔しているのです。
5)-7)ところが、この日曜日の9月13日。いつものベンチに行ってみると様子が変わっていたのです。ベンチの周りに生えていた、キツネノカミソリもヤブランもフタリシズカも(いずれも花期は終わっていましたが)すべて刈り取られていたのです。もしやと思ってシロダモの場所を見ると、無残にもシロダモも刈り取られていました。キツネノカミソリもヤブランもフタリシズカも、多年草だから来年生えてくるかもしれません。しかしシロダモはせっかくあそこまで育っていたのに、と残念でなりません。■ここで東吾妻の藪払いのことを思い出したのです。登山道は藪払いなどの整備により道として保たれています。歩く人が少なく放置していると道がなくなります。森に入るには藪払いは必須です。そして、この場所はベンチがあるくらいですから藪払いは当然でしょう。ベンチも草に樹に埋もれてしまうからです。そういう意味では、自然好きの人間であっても森にとっての最大の攪乱要因であったことに複雑な思いで一杯になったのでした。
8)-17)シロダモは別の樹を見つけましたので定点観察に登録(D11)しましたが、刈られてしまったシロダモも記憶に残したいと思います。
11)基部の側脈が目立つのが大きな特徴。ヤブニッケイの葉に似ている。(2020/9/16)
<果実>
20) 今日も続いてこの森の果実を紹介します。これは、ありふれた赤い実です。似たようなのは、ガマズミ、サンゴジュ、マンリョウ、などを紹介しているので、またかという感じでしょうが、記録のためということでご勘弁を。これはこの森で、幼樹をよく見かけるシロダモです。なぜ幼樹が多いのか。日陰でもよく育つ耐陰性なので暗い森の中でも育つ。しかも10m以上の大木になるけど、若い背の低いうちでも実をつけるようなのですね。だから、実を見つけられたというわけです。例によって、拡大してみましょう。
21) シロダモの実。これは毒ではないけど果肉が少なく食べられる部分は少ないようです。(食べる話ばっかり)(2021/11/4)
<花=雄花>
23) 先週、シロダモの赤い実を紹介しました。そのあと知ったのですが、シロダモは実が生ると同時に花が咲くという、珍しい生態らしいのです(つまり花が咲いた後に1年かけて実が生る)。そこで、確認に行ったのですが、実が生っていたシロダモに花は咲いていませんでした。もう散ってしまったのかな、残念と少し歩いていたら、花が咲いているシロダモを発見したのでした。この遅い季節に花を咲かせる樹はそうありません。確かにシロダモです。しかしこちらは実が付いていません。ということはこれは雄株でしょう。シロダモは雌雄別株なのです。丸いつぼみは花芽。これから続々咲くことになるのでしょう。例によって拡大してみましょう。
24) シロダモの雄花、だと思うんですが、雌しべがあるような。雄花にも雌しべがあるけど結実しないらしいのですが、雌花っぽいですね。うーん、観察継続です。(2021/11/9)
30) 最近何度か紹介しているシロダモの続きです。前回は雄花のつぼみを紹介しました。この写真は11月6日のものです。それから1週間弱の11月12日には開花したのですが、どのように咲いたと思いますか。これにはびっくりしました。
31) 30)と同じ部分のシロダモの開花。まだ満開ではないけど、蕾は一斉に花を開かせるんですね。
32) これは別の枝ですが、多くの花が団子状に固まって、ひとつの大きな花のようになっていました。とにかく花粉を飛ばそうとして数で勝負の目を惹かせる戦略なんでしょうね。雄花か雌花か迷ったけれど、これは雄花としか考えられません。
29) 団子になった雄花がたくさん付いていて壮観でした。この株は特に元気がいいのかもしれません。長い一生の最盛期なのかも。他のシロダモはこんな感じではなかったんですよね。そして雌株も雌花を咲かせていました。全然雰囲気が違いました。それは明日紹介しましょう。(2021/11/15)
<花=雌花>
34) シロダモの雄花は豪華に花を咲かせていましたが、雌花はどうでしょうか。この樹は、雌雄別株ですので、雌株を探さなければなりません。雌株と言えば、赤い実が生っていた株がありました。10日前のことです。その時は花は見つからなかったのですが、確認してみました。おやおや赤い実はすでに落ちたか食べられたかしてしまったようです。さてこの樹の花はどうでしょうか。
35) シロダモの花が咲いていました。雌株の花だから、雌花ですね。雄花と比べるとかなり数が少なく、ひっそりと咲いている感じです。普通、シロダモの雌花は、果実がなるのと同時に咲くということですが、この株の場合は、少し時間差があったようです。例によって拡大してみましょう。
37) シロダモの雌花。もっこりした白いのが雌しべですね。雄しべは葯がなく棒状に退化(あるいは未発達)しています。シロダモは雄花の方が見栄えがいいですね。
1) 2020/5/6 1)-4)6)8/29 5)7)9/13 8)9)8/29 10)9/5 11)-17)9/13 18)-21) 2021/10/29 22)-27),30) 11/6 28)-29) 11/13 31)-34) 11/12 35)-37)11/13 38) 11/12